掲載日:2023年7月4日
奥井:弊社の宇宙事業は大きく分けて二つあります。
一つ目は衛星データの活用を昨年同様進めており、既存の顧客が持つ情報と衛星データから取得できる情報を組み合わせることで新たな価値を提供することを目的に、ビジネス検討や技術検証を推進しています。具体的には、原材料調達のトレーサビリティサービスやデータ利活用ソリューションの検討を推進しています。
二つ目はMBD(Model-Based Development)と呼ばれるモデルベース開発のシミュレーションにも注力しており、従来、製造業を中心にシミュレーションを用いて課題解決を行ってきた技術・経験から、人工衛星の開発領域への応用など、宇宙×MBDのビジネスを推進しています。
藤田:昨今、環境面もですが持続可能な社会を形成していく上で、不当な調達や取引が行われていないか、企業が消費者へ提示していくことは大変重要となっています。調達トレーサビリティでは原材料の取引状況について、衛星データを使って取引のある畑や森林の増減状況をモニターし、ブロックチェーン技術を用いて追跡することで、原材料が適正に調達されていることを証明していきます。また、企業ではサスティナビリティレポートでCO2の削減量を定量的に把握・報告する必要がありますが、内容がCSR(Corporate Social Responsibility)領域ということもあり、コストを充分にかけることができないケースも多いため、アウトプットと衛星データにかかるコストのギャップをどのように埋めていくのかについても考えていく必要があります。
弊社では、本サービスのように衛星データを活用したサービスについて、様々なビジネスアイデア検証を行っております。コロナ禍であったコンテナ不足や、船便遅延といった国際物流におけるサプライチェーンの課題を解消していくことや、衛星データから都市開発の変遷を可視化し、既存のマーケティングデータと掛け合わせた分析を行って、観光プロモーションに活用するといったケースがあります。「衛星データに既存ユーザが持っている情報をしっかり掛け合わせていく」ということを重要視しつつ、ご提案を行っております。
藤田:シミュレーション領域に関しては、昨年から人工衛星のモデル化に取り組んでいます。人工衛星だけではなく製造業全般の傾向となりますが、国内のものづくりでは現物主義で、試作品を中心に設計・テストし、結果的に部分最適が進んでしまうケースがあります。我々はITシステム開発、保守が主たる事業ですが、保守性の高いシステムを構築することは最も重要な事項と考えております。
ハードウェアとソフトウェアを設計段階から統合的に管理して開発したり、運用保守を念頭においた設計を行ったりという必要性が、宇宙機の開発や製造業でも今後、高まってくると考えております。このシステム全体の統合管理を行うために、MBSE(Model-Based Systems Engineering)やMBD(Model-Based Development)のフレームワークを活用しています。 特にMBSEはMBDと一緒に導入することで、ものづくり上流工程における要求仕様整理や依存関係の可視化に効果があると考えております。とはいっても、設計部門の担当者様のリソースが限られる中、新しいツールを導入していく負荷は高いですので、MBSEを導入したいと考えている現場の皆様と一緒に導入を支援していきたいと考えております。
奥井:我々は宇宙×IT を推進していきたいと考えています。そのため現在、宇宙ビジネスをリードしている方々と繋がるコミュニティ/関係性構築に注力しています。
また、「将来的には宇宙で何かやりたいけど既存ビジネスとの親和性が分からない」「何から推進していいか分からない」といった方々と、宇宙ビジネスを繋げる翻訳家の役割を担っていきたいと考えています。
藤田:現在、AIに注目が集まっておりますが、制約事項の多い宇宙領域の開発にもAIは充分に活用できると考えています。自社の情報をセキュアな形でうまく使って、個社別の開発の最適化や、運用の省力化に活かしていくことが今後当たり前になっていくと思いますので、プロンプトの制御だけではなく、宇宙に特化した関連ドキュメントの生成ツール作成にも力を入れていきます。
奥井:IT業界の企業が少ないところで、宇宙を推進するIT企業の先駆けになりたいという思いがありました。
また、活動を推進していく中でコミュニティ形成が非常に重要だと感じており、社内でも宇宙事業を強く後押しいただいているので、今年も引き続き協賛させていただくことにしました。
藤田:SPACETIDEは、海外へのチャンネルがあり、アジア・ヨーロッパなど多くの海外企業と情報交換できる場であることに大きな魅力を感じております。国内だけではなく、グローバルな視点で課題を解決に取り組みたいと考えております。
奥井:SPACETIDEを通して出会ったいくつかの企業と情報交換を続けており、新規ビジネスに結び付ける途上ではあるものの、ビジネスの解像度がかなり上がってきていると実感しています。
先日も、とあるイベントで農業領域に関わる企業の方から、SPACETIDEに協賛していることを認識しているとのお話をいただき、徐々に我々JSOLが宇宙ビジネス関連企業であることが、浸透しつつあることを実感しています。
宇宙産業に関係する方が増えていることも実感しておりますし、3年前と比較しても宇宙に関する話題がニュースで取り上げられる機会が本当に増えていると感じています。これからは我々のような民間企業がさらに宇宙業界を盛り上げていく必要があると考えています。
奥井:我々が本格的に宇宙の領域に携わるようになったのは昨年からですが、初めは宇宙×自社ビジネスで親和性があるのか疑念を持っていました。しかし実際に推進していく中で、宇宙ビジネスの幅広さを実感しており、「みんなでビジネスを作っていこう」という機運も感じます。
現在、宇宙に携わってない方でも自社の強みと宇宙を掛け合わせて何か新しい価値を生み出せればと思いますし、我々で貢献出来ることがあれば是非お手伝いさせていただきたいと思っています。
藤田:SI領域でのご提案や、“いのべ場””社会デザインビジネスラボ”といった新規ビジネスのアイデア創出フレームワークや検討の場もございますので、小さいアイデアや思いつきから、アイデアを育て、実装するところまで伴走していくことが可能です。非宇宙企業の皆様には宇宙領域との掛け合わせを提案させていただきますので、ぜひお気軽にお声がけください!