横河電機株式会社

掲載日:2023年7月4日

現在の活動内容

-あらためて現在の活動内容を教えてください

白津:いくつかの事業開発活動を平行して行っています。人工衛星データを活用したリモートセンシングの技術および事業実証を行っています。また、弊社のライフサイエンス機器である共焦点スキャナが国際宇宙ステーション(ISS)に納入され使われており、このビジネスの拡大に取り組んでいます。さらに、宇宙機関、宇宙企業の地上設備向けに、計測、制御機器をご提供していますし、開発者向けには、オシロスコープ、データロガー、スペクトラムアナライザー等をご提供しています。

-貴社では宇宙ビジネスをどのように捉えていますか

白津:我々にとって宇宙産業は事業探索領域と位置づけており、中長期的な未来のビジネスの柱になるという期待をもって進めています。

横河電機は測ることがミッションの1つですので、衛星という新しい物差しの可能性に大いに期待しています。また、制御することも重要なミッションです。宇宙は極限の環境であり活用できる資源も限られているため、あらゆるものを再活用していく必要があります。この環境制御技術の開発が進めば、サーキュラーエコノミーにつながり、それにより地球環境改善などの課題解決にも貢献できると考えています。

黒須:我々にとって、宇宙と地球は別物だとは捉えておらず、地上で行っているものが宇宙にも広がっていくものだと考えています。

例えば地球上でもプラントの制御などを行っていますが、それは今後、月でも行うと思います。地上で行っていることが経済圏として宇宙にも広がっていくので、我々は技術開発・製品開発を通して宇宙産業の発展に貢献をしていきたいと思います。

宇宙産業へ参入したきっかけ

-宇宙産業への参入をしたきっかけを教えてください

白津:1961年に、糸川先生が設立された東京大学生産技術研究所のK-8型ロケットに電離層観測器を納品したのが最初です。
その翌年には、NASAのロケットに対して同観測器を納品しておりそれ以外も多くの計測機器を様々な企業様に納品してきました。

-改めて宇宙の領域に注力しようと思った理由を教えてください

黒須:宇宙産業に注力することを決めた理由は二つあります。
一つ目の理由は、「計測」「制御」「情報技術」という我々の3つのコア技術を宇宙でも活用したいと考えたからです。これまで、エネルギー産業や資源開発の中で厳しい環境にチャレンジし続けてきました。深海であれば、水深3,000メートルまでチャレンジしていますし、極地ではマイナス50度という環境下において長期間稼働する技術を開発し、製品を納め続けています。

そうした難易度の高いチャレンジを地上ではやり切った印象があり、「次は宇宙を目指そう」という声が社内の現場からも聞こえ始めていました。

黒須:二つ目の理由は、ニュースペース革命の波を感じビジネスチャンスがあると確信したからです。
私自身も、宇宙の領域にチャレンジをしたいと考えていたため、2019年に国際宇宙大学(以下ISU)に留学しました。

そこでものすごく大きな衝撃を受けました。

NASAが民間のSpace Xに打ち上げを委託した、ファルコンヘビーのブースターが再利用のため3機とも地上に戻るのをISU同窓生とライブビューイングを行う等、民間の宇宙ビジネスの息吹を肌で感じました。これまでは国が主体で進められていたものが、ここまで民間に権限を移譲しているんだということが非常に衝撃的でした。

これだけ民間が活躍する機会が広がっているのであれば、非宇宙企業である我々もこの業界にインパクトを与えることができると確信し、日本に戻ってからすぐにタスクフォースを立ち上げました。

地上でのチャレンジをやり切ったというタイミングと、ニュースペース革命の波が起こっていることが分かったため、次の注力領域の一つとして宇宙を捉えることは、決して難しい判断ではありませんでした。

-タスクフォースを立ちあげた目的とその後の変化を教えてください

黒須:既に宇宙産業への取り組みはあったのですが、それまではプロジェクト毎の対応で、担当した部門の現場だけにノウハウが蓄積されている状況でした。

一つの部署でノウハウを蓄積し、組織横断的な活用ができる状態にすることが重要だと考え、2019年7月には宇宙事業準備室を設立して社長直轄組織としてスタートしました。
2022年4月には宇宙事業開発室へと改名し、研究開発機能を持つまでに組織は成長しています。

今後注力したいビジネス

-新しく始まったビジネスやこれから注力していきたいビジネスを教えてください

白津:新しい取り組みは複数スタートしておりますのでいくつか紹介します。

リモートセンシング

衛星を利用した林業および鉱業向けのサービスを実証中です。また、他の産業についても、順次展開を予定しています。弊社の制御機器やセンサーがプラントや大規模インフラに導入されているため、そこで取得できる地上のデータと宇宙のデータを掛け合わせて新しいインサイトを生み出してお客様に価値提案ができないかを検討しています。

月・新宇宙探査

非常に高感度で堅牢なガスセンサーを使用した、「月面水資源探査装置」をパートナー企業の方々と開発しております。月に水があると言われていますが、実際に産業に必要なレベルで水資源があるのかどうか調べる必要があるため、我々のセンサーを活用して調査をする準備を進めています。

また、これとは別に月面水素バリューチェーンの検討プロジェクトをパートナー企業の方々とスタートしています。

宇宙ステーション

細胞を生きたまま観察可能な共焦点顕微鏡等ライフサイエンス製品で、現在ISS(国際宇宙ステーション)でも稼働中です。今後多くの民間宇宙ステーションが立ち上がることが予想されますし、そこでラボを設置したいというニーズを受けているので、対応ができるよう準備を進めています。

宇宙機・宇宙構造物

宇宙機と宇宙構造物向け宇宙構造物向けの健全性監視ファイバーセンシングを検討しています。

ロケットや月面の建造物などにファイバーをぐるぐると這わせて、欠陥や異常があれば検知できるような仕組みを研究しています。

宇宙向け半導体製造

宇宙産業に適した多品種少量生産の半導体製造ソリューションを提供中です。小規模で特殊なものを作れるため、開発の効率化やコストの最適化に貢献できるようにしたいと考えています。

我々の持つ技術的な知見をこれらの分野で生かして、ビジネスチャンスを広げていきたいと考えています。

SPACETIDEへ協賛を決めた理由

-今年もSPACETIDEへ協賛いただいた理由を教えてください

白津:どんなプレイヤーが宇宙業界に参画しているのかを知る機会として、それら企業とのネットワーキングの機会として、非常に重要だと考えています。また、様々な事業フェーズにいる企業の方が、現場の生の声を吐き出してくれることが印象的です。スタートアップから大手企業まで、現場の声を教えてくれるので、これから我々がチャレンジする際に直面するであろう課題をイメージする機会としても非常に役立っています。

黒須:国際性が高いことが魅力だと思います。日本でこれだけハイレベルな登壇者が集まるカンファレンスはなかなかないと思います。日本に居ながら世界の方とネットワーキングができるのは大変貴重な機会です。

実際、我々の事業の売上の約7割は海外からのものです。そのため、既存企業を通じて宇宙ビジネスを始めたということが伝わり、海外の研究機関や大手企業、スタートアップなどからの問い合わせや実際の取引も始まっています。

しかしながら、これらはまだ点や線上の成功に過ぎず、それらをつないで面の成功にしていく必要があります。SPACETIDEのような世界中のハイレベルな方々とつながれる機会は重要ですし、我々も現在はアプローチできない領域の方との接点を持つことも、非常に貴重だと考えています。

SPACETIDE2023に参加する方へのメッセージ

-当日SPACETIDEに参加者する方へメッセージをお願いします

白津:我々が今取り組んでいる宇宙事業を皆さまに知っていただきたいと思っています。
我々の計測や制御、情報技術を宇宙と地球の新しいフロンティアでも生かしていきたいと考えていますし、これらのコア技術を応用して皆さまの事業の支援につなげていきたいと考えています。

また、宇宙事業を考えている非宇宙業界の方ともコミュニケーションを行えたらと考えているので、弊社にご興味をもっていただけた方はぜひお声がけください。

黒須:我々は様々な宇宙プロジェクトに参画するようになりました。これは様々なコミュニティを通じて人と出会い会話を重ねてきたことが一番大きい要因だと考えています。
我々の技術については、既に世界でも認められていますので、ぜひみなさんの事業と我々の強みを掛け合わせて一緒に成長していけたらと思います。

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